令和5年2月5日(日)、岩手県立大学の伊藤隆博先生による「医療ソーシャルワーク基礎研修「支援方法論」が午前・午後にわたりオンラインにて開催されました。第2部となる午後は、面接技術に焦点を当てた講義・演習で理解を深めました。
前半は、二人一組でSW役とクライエント役に分かれた演習を通して、面接とは何か?を考えました。
アセスメントシートを全て埋めることが面接の目的ではあらず。(身に染みます。)
クライエントを一人の人間としてリスペクトし、信頼関係に基づき、共同作業にて希望を実現するために問題解決の条件を探ることが、SWが面接を行う目的であり意義である。そのためには多くのアンテナを立て、クライエントの感情を敏感に受け止め、意味をクライエントの問題に関連づけて理解することが求められる。それこそが、SWが対人援助の専門職と呼ばれる所以だと感じました。
後半は、「面接技術」と「ソリューション・フォーカスト・アプローチの質問の型」について学びました。
ソリューション・フォーカスト・アプローチは問題解決ではなく解決構築に焦点を当てる、という考えが、私の中では非常に新鮮でした。裏返すと、日々の業務で問題解決に焦点を当てがちだという傾向も自己覚知する機会ともなりました。実際にクライエント役での演習を通して、自ら解決策を導き出すことができた体験から、クライエントの強さやスキルを引き出すことができる有効なアプローチであると実感しました。
「相手が自身の問題や解決の専門家である」という言葉が印象的でした。相手から教わるために、質問の型を使いこなせるよう日々、努力していきます。
言うまでもなく、SWプロセスにおいて、「面接」は幾度も繰り広げられております。
何のためにSWが「面接」を行うのか?
実践的な演習を通して、普段の業務の振り返りや新たな学びを得ることができ、より理解度が深まったように感じます。
最後は、みんな仲良く“指ハート“です。
ありがとうございました。
文責 広報部会理事 佐々木亘
ソーシャルワークの展開過程である、インテークやアセスメントでつまずいて、「もう一度はじめから情報収集しなければ」とか、「いったいどこで道を間違ったのか?」と普段の業務で悩んだり、焦ったりした経験はありませんか?MSWになって間もない方は、誰しもが経験する登竜門であると思いますし、中堅やベテランになればなるほど、その重要性が身に染みて理解されているのではないでしょうか?
令和5年2月5日(日)、岩手県立大学の伊藤隆博先生による医療ソーシャルワーク基礎研修「支援方法論」がオンライン形式にて開催されました。第1部となる午前は、主にその「アセスメント」に焦点を当てた講義と演習でした。インテークやアセスメントにおいて重要な事柄を、あえて平易な言葉を選択して、お話しされる伊藤先生の講義は、自分自身の業務を再点検するとても良い機会になったと感じました。
まずは、インテーク面談。クライエントが支援の対象者に該当するのか「仕分け」をして、同時にその「緊急度をとらえる」スクリーニングから始まり、来談者不安に寄り添いながら、インテークを進めていくことが重要である事をあらためて学び直すことができました。
そして、アセスメントとは、クライエントとMSWが「協働」で行う作業であり、身体機能的状態(バイオ)・精神心理的状態(サイコ)・社会環境的状態(ソーシャル)をできるだけご本人から情報収集する事、そしてクライエントの「現実に立ち向かっていける力=ストレングス」に着目しながら、「両者が共に理解を創る」作業をソーシャルワークの展開過程の中で「何度も繰り返していく事」であるという講義内容は、医療モデルだけに準拠しない私たちMSWが医療機関にいる意味を再認識させられた気がしました。
また、アセスメント・スキルにおいては、「環境も含めてクライエントの全人的理解を目指し、可能な限りその人に近づくこと」がアセスメントの目標であるとしつつも、専門職であるMSWの認知もあくまで主観的で、それは「必ず歪まざるを得ない」ものであり、まずは大いに「勝手な解釈」を持って「仮説生成」にチャレンジ、それをクライエントとともに「検証」していく事が大切である事を演習の中で身をもって体験できました。
伊藤先生のご講義は、ナラティブアプローチの源流となった社会構成主義がその根底に流れているようで、非常に興味深く、また肩肘張らずに聞くことができる有意義な時間だったと思います。
「理論なき実践は盲目であり、実践なき理論は空虚である」とは、哲学者であるカントの言葉ですが、実践で経験を積みながら、関係する本を読んだり、演習を伴う研修に参加して、理論と実践を行ったり来たりすることで、私たちソーシャルワーカーとしてのスキルは絶えず磨かれていくのだとあらためて思った次第です。ありがとうございました。
文責 広報部会長 佐々木 章
皆さんは日ごろ、患者さんと会う時間が減った、入院日数に追われている…などのもやもやはありませんか?
このもやもやが晴れるような講義が、令和5年1月13日に北上済生会病院の菊池涼子さんを講師に行われた「診療報酬とソーシャルワーク」です。
前半は診療報酬化までの過程を振り返りつつ、これからの診療報酬とMSW、今後めざすべきMSWの姿についてもお話されました。後半はグループワークを行い、日ごろの診療報酬との付き合い方について意見を交わしました。
2008年に診療報酬に社会福祉士が明記されてから今年で17年が経ちます。このことで、業務を広く知られるようになり、業務の成果の一部は数字として表しやすくなったなど、一定の効果があった一方、MSWの仕事は「退院支援」と思われるくらい、大きなウエイトを占めるようになったのも事実です。
「医療機関のゴールとMSWのゴールは別」という言葉を聞いて改めて感じたのは、当たり前のことですが、算定のため、在院日数を短くするために私たちがいるわけではないということです。患者さんの人権が守られ尊重されているか、また生活課題やニーズに対して根拠ある行動をとっているかを確認しながら実行できるからこそ医療機関にソーシャルワーカーがいる所以なのだと思いました。これについては、実践と倫理の繰り返し、業務指針に落とし込みながら業務を進めることが肝要とのことです。
また市政や施策に関わる行動も目指すべき姿のひとつとの事。会議や協議会へ参加するなど、何らかの形で関わることで、ソーシャルワーカーの存在を知ってもらったり、間接的に社会資源をより良くする一端を担うことができます。まさに“ソーシャル”ワーカーです。
「これからは医療や介護だけの課題ではなく、多種多様な分野の課題も包括的に支援していく姿勢も必要で、その中核を担うのがMSW」という言葉を聞き、改めて所属機関や患者さんのためだけではなく、社会に働きかけられるMSWでもありたいと感じた研修でした。
文責 広報部会 小原
令和4年12月16日(金)、医療ソーシャルワーク基礎研修⑥「チーム医療と地域連携」がオンラインにて開催されました。南昌病院 医療ソーシャルワーカー 吉田利春様よりご講義いただきました。本講義では、MSWの連携・共同における支援の目的・姿勢・役割をおさえた上で、サービスの質を吟味し、かつ連携の方法論や手法を理論的根拠を持つ実践的技術として身に着け、より質の高い専門的なMSW実践の展開に寄与できるようにすることを目的としています。
院内及び地域への連携を担っているのがMSWの任務の1つですが、講義では、現代のMSWの課題として、他職種とは異なるMSWによる独自の連携の在り方が挙げられました。私も日々の業務の中、MSWの私だからこそできる支援は何だろう、私の果たすべき役目は何だろうと分からなくなる時があります。講義では、退院支援看護師とMSWで異なる部分は、MSWは「退院時」に焦点を当てず、退院後のことを考えて支援を行うため、退院後の生活でもフォローできるよう、ケア会議に誰を呼ぶかといったチームマネジメントが必要という話がありました。入院時にクライアントと地域をつなぎ、その後のフォローができるのはMSWならではの任務であることを改めて実感し、様々な機関とつながっておく多層型連携の重要さに気づけました。また、チーム内の他職種で意見が異なり、摩擦が生じた時に、MSWが他職種をコントロールすることが重要ともありました。私はケア会議を開催時、いかにスムーズに進行させるか意識してしまうため、出席者間で摩擦が生じてしまうことがあります。それを解消するプロセスを経ることによって、他職種の専門意見をより聞くことができ、チームで協業につながることが分かりました。
院内では医療専門の医師・看護師等とは違う視点で連携することの難しさ実感しています。院外では、地域とは多くの機関と連携する際の情報の取り扱いの注意、正確な情報伝達に苦戦していますし、MSWの役目を果たせているか不安になるときもあります。それでも、クライエント、院内のスタッフ、地域の関係者等、多くの方から感謝されるのはMSWだからこそできる業務をしているからだと思います。今回の講義で学んだことを活かし、吉田様がおっしゃっていた「クライエントを靱帯とした」支援を心掛けていきたいです。
文責 広報部会 工藤
和4年11月26日(土)、医療ソーシャルワーク基礎研修⑤「医療ソーシャルワークと記録」と題して、盛岡友愛病院 医療相談室 神田様よりご講義いただきました。土曜の午後にも関わらず若手からベテランまで17名の参加がありました。
講義では、記録とは何か?から始まり、誰のためにあるか、記録の内容や方法、留意点、活用について振り返りを行いました。
私たちが普段ケース介入した際、基本情報(フェイスシートとなるもの、病状、家族構成、生活歴、社会資源活用の有無等)を収集し、クライエントの主訴を聞き、そこからアセスメント、援助目標、計画を立て、援助の実施、振り返り等を行っていると思います。
私が講義の中で、ハッとさせられた気づきとして、「ソーシャルワーク記録を残すうえで一番大切なことは、我々ソーシャルワーカーの専門性はアセスメントに表現されるとし、アセスメントをどのように記載できているか」というところです。どのような情報からどう分析・統合し、その援助を導いたか、というこの過程を記録にしっかりと残せていますか?と問われ、自分の記録を反省する内容でした。
グループワークでは、アセスメントを実際どのように記録しているか、また所属機関で記録方法はどのようなものか話し合いました。紙媒体か電子カルテか、SOAP形式か自由形式か。それぞれメリット、デメリット踏まえながら、所属機関の特性に応じた取り組みを共有することができました。
記録は、意識していないとついつい自己流になってしまいます。優れた記録とは、自身の支援内容を振り返るのみならず、クライエントへの援助の質的向上につながります。また、クライエントのためのものでありつつ、チームや組織のためでもあり、我々ソーシャルワーカーが専門職であることへの証明でもあります。
今一度、記録とは何か、誰のためにあるか、自身の記録を読み返しながら、振り返ってみてはいかがでしょうか?
文責 広報部会理事 高橋はるな
令和4年11月11日(金)、一般研修Ⅱ「在宅医療とソーシャルワーク」がオンラインにて開催されました。本研修では、「一般社団法人みんなの健康らぼ」や「やまと在宅診療所一関」の医師として幅広くご活躍の杉山賢明先生を講師とし、先生の在宅医療におけるご経験と、先生自ら取り組む人生会議に関する活動についてお話し頂く中から、我々ソーシャルワーカーの果たすべき役割を考える機会とすることを目的としています。
当日は、今まさに現場で実践を積まれているソーシャルワーカーの方々から、ソーシャルワーカーを志す学生の方々まで、計21名と幅広い層の参加がありました。
「ソーシャルワーカーとプライマリケア医の共通点」「一関市における現状と課題」「訪問診療の実際」「広義の人生会議」と、4つのセクションから、内容の濃いお話を頂きました。
まず、ソーシャルワーカーとプライマリケア医は、ご本人の「ウェルビーイングの向上」という共通の目的があります。地域包括ケアシステムの中で、中心はご本人の生活であり、ソーシャルワーカーはプライマリケア医の良きパートナーとして、在宅医療に貢献する存在であることを再認識しました。
私自身、普段の業務では触れる機会の少ない「在宅医療」の実際について知る、非常に貴重な経験となりました。地域の実情を踏まえながら、リアルな現場の声や実践例を通じて、在宅医療の醍醐味や重要性が伝わってきました。
そして、人生会議、意思決定支援は、ソーシャルワーカーが関わる意義が非常に深いと感じております。これまでの話を語ってもらう中から、その人の価値観を知り、これからの話へ展開していくことで、より良い人生の最期へ向かうお手伝いをする。そんな人生会議の在り方を、職場内でも共有し、私自身も実践していきたいと思いました。
今回の研修を通して、ご本人の生きる権利を擁護し、価値観や生活に焦点を当て、ウェルビーイングを高めることが、私たちソーシャルワーカーに求められる役割だということを、再認識させて頂く機会となりました。
杉山先生、ご経験に基づく貴重なご講演、本当にありがとうございました!!
文責 広報部会理事 佐々木亘